実態・事例
オーバードーズ(市販薬や処方箋薬の乱用)
皆さんは、「薬物」というとどのようなイメージをもつでしょうか。
大きく分けると、大麻や覚せい剤などの違法なドラッグのように、「体を壊してしまうネガティブなイメージの薬」と、お医者さんに処方されたり、薬局などで医薬品として市販されたりしている「体を治すためのポジティブなイメージの薬」の2種類が考えられるのではないでしょうか。
そのうちの、「体を治す薬」も2種類に分けることができます。
- お医者さんが処方した薬
- ドラッグストアやネット通販などで個人購入ができる薬
このうち、市販されている薬は、医師の処方箋も必要なく薬局で個人が購入可能であることから、「体への害は少ないもの」というイメージがある人も多いかもしれません。
しかし近年、この「市販薬」による依存などのトラブルが急速に増加しています。
それは市販薬を一度に大量に服用する「オーバードーズ」と呼ばれる行為により、急性の中毒症状となり、救急搬送される事例などです。
「ハイになるため」「気分を変えるため」「気持ちを落ち着かせるため」など、精神的な理由で大量の市販薬を服用し、その結果、嘔吐や腹痛、意識障害、ふるえや頭痛、耳鳴り、不整脈など、身体に大きなダメージを与えることが少なくありません。これは、適量を超えた服用により、特定の成分が体に悪影響を与えているものです。
このように過剰に市販薬を服用するオーバードーズは、身体や精神に大きなダメージを受けるため、近年大きな社会問題となっています。
- 市販薬の依存症患者は2012年から2020年にかけて6倍に増加しています。
- 市販薬の乱用経験者は約60人に1人いるという調査結果があります。(大麻の使用率の約10倍)
市販薬を大量に服用をする人がいる背景には、
- 薬物に関する情報をSNSで容易に入手しやすいこと
- 大麻などの違法薬物と違い、罪悪感が低いこと
- 気軽に入手しやすいこと
などが考えられます。
国立精神・神経医療研究センターの「薬物使用と生活に関する全国高校生調査(2021)」には、市販薬の乱用経験のある高校生の特徴として、次のようなものが挙げられています。
- 男性より女性が多い
- 睡眠時間が短い、朝食を食べない頻度が高い、インターネットの使用時間が長いなどの生活習慣の特徴
- 学校が楽しくない、親しく遊べる友人や相談ができる友人がいないなどの学校生活の特徴
- 親に相談できない、大人不在で過ごす時間が長い、家族との夕食頻度が少ないなどの家庭環境の特徴
薬物やオーバードーズについて悩みや疑問を感じたときは、周囲の信頼できる大人や相談窓口に相談しましょう。