対策・対処法
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)サイトやアプリ
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)とは、人と人とのつながりを促進・サポートするコミュニティ型Webサイト・アプリのことで、コミュニティサイトの一種です。趣味や嗜好(しこう)、居住地域、出身校、あるいは「友人の友人」といったつながりを通じて新たな人間関係を築くことを可能にするサービスです。
それぞれのSNSのサービスが、スマホ用のアプリを提供してるので、スマホを使えば、いつでもどこでも他人とつながることができる上、他人の様子がリアルタイムにわかり、即時性が高まりました。逆に、他人から距離を置くことが難しい環境になったとも言えます。
中高生の多くが、日々携帯するスマホを常に利用しているため、いつどこにいても、他人とつながっていなければならない環境に置かれています。そういった環境の中で、スマホやSNSを意識的にオフにするなどし、スマホ自体や他人と四六時中つながっている環境に依存しないように成長していかなければなりません。
岡山県内では、X(エックス※旧Twitter)、Facebook(フェイスブック)、Instagram(インスタグラム)などの様々なSNSがある中で、ネットやコミュニケーションサービスを利用していると回答した児童生徒のうち、小学生の7.8%、中学生の29.1%、高校生の50.9%がXを使っています(2023年岡山県教育庁人権教育・生徒指導課調べ)。一方で警察庁の調べによると、犯罪被害の入り口となるネットサービスで最も多いのがXとなっているため、危険性を児童生徒に伝える必要があります。
Xは、短文投稿サイトとも呼ばれ140文字の短い「つぶやき」を発信するSNSです。1人で複数のアカウント(サービスを利用するための権利(ID))を簡単に作ることができるため、本人だと表明しているアカウント以外にも、匿名で登録しているアカウントで趣味の仲間を探したりすることができます。書き込み内容の検索機能や、#(ハッシュタグ)と呼ばれる同じタグを付けた投稿を簡単に表示する機能をきっかけに、DM(ダイレクトメッセージ)を送り合って見知らぬ人と知り合いになることもできます。
アカウントにはプライバシーの設定で、「ポスト(旧ツイート)を非公開にする(通称「鍵をかける」)」設定ができ、特定のユーザーしか内容を見られないようにすることができるので、どのように自分のアカウントを使うかを十分に考えることが不可欠です。この「鍵」により閉鎖されたアカウント内は、ネットパトロールの業者は閲覧できないため、犯罪が明るみに出にくいといった側面もあるためです。
警察庁の調べでは、「コミュニティサイト(SNSや無料通話アプリを含む)」をきっかけとして犯罪の被害に遭った児童は、2020年の一年間で、全国で1,819人となっています。被害者のうちの35.3%が、短文投稿サイトのXに起因し、被害にあっています。(警察庁発表「令和2年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況」より)
これは、SNSの特徴である簡単に複数の匿名のアカウントを作ることができることと、検索により知り合い以外の人からも簡単に目をつけられてしまうことが原因と考えられています。
SNSには、実名登録のものもあれば、匿名で利用できるものもありますが、実名登録のサイトでも、SNSで関わる他の会員が、必ずしも本当のプロフィールを掲載しているとは限りません。多くのSNSは、登録する時に身分証明書類などで本人確認をされることがなく、誰でも簡単に利用できます。
このような、ネットに起因する犯罪被害を防ぐためにフィルタリングサービスがあります。フィルタリングは、青少年にとって不適切なサイトを契約端末から閲覧できないようにする仕組みです。しかし、犯罪被害が起きているサイトの中で、フィルタリングをしていれば被害を防ぐことができたサイトは半数程度で、フィルタリングですべての被害を防ぐことができる訳ではありません。また正しく設定されていなければ意味がありません。
フィルタリングでは、多くの小中高生が利用している、SNS、ブログ、無料通話アプリ、質問サイト、動画共有サイトなどは「コミュニケーション」のカテゴリーに分類されています。これらのうちの一部のサイトを利用したいために、「コミュニケーション」カテゴリーのフィルタリングを設定しない、または一度設定した後解除する状況が見受けられます。
また最近、SNSで面白半分の不適切な画像や動画の投稿が目立っています。自分では面白いと思って投稿しても、他の人には不愉快であったり、社会的に許されなかったりすることがあります。このような投稿は、コピーが繰り返されて拡散し、個人が特定されることもあります。中には投稿が元で、就職の合格内定が取り消されてしまったり、婚約破棄になってしまったりすることもあり、一生後悔することになるかもしれません。
近年、企業の採用人事では、応募者の人柄や行動について、SNSを確認するのが当たり前になっています。一度インターネットに公開した情報は、入れ墨(タトゥー)のように半永久的に残ってしまい、完全に削除することは困難です。このことから、専門家は「デジタルタトゥー(電子的入れ墨)」と呼んで、安易に不適切な投稿をすることに対して警鐘を鳴らしています。
問題点・危険性
- 不特定多数の人たちと交流することが可能です。
- 相手がオープンにしている個人情報が正しいとは限りません。
- 個人情報の管理がずさんになりやすくなります。
- 個人情報を偽ったり、匿名でも掲載できるので、掲載する内容が過激になりやすくなります。
- 実際に会員同士で会う「オフ会」と呼ばれる会合に気軽に参加してしまい被害にあうケースが発生しています。
- SNSをはじめとするコミュニティサイトで(無料通話アプリを含む)の犯罪被害が急増しています。
- 不適切な投稿で、人生が変わってしまうかもしれません。
対策・対処
- 多くのSNSでトラブルが発生しています。SNSが提供するサービス・仕組みをよく理解して利用しましょう。
- SNSは、性質上、身近な人が見ればすぐに個人が特定できるという事実を認識しましょう。
- 投稿の内容やコメント欄で、人を傷つけたり、反感を買うような投稿をしないように注意しましょう。
- SNSで反感を買った投稿などは、一生インターネット上に残り消すことができません。十分注意しましょう。
- SNSを利用しているすべての人がよい人とは限りません。関わりを持ちかける人を気軽に信用しないようにしましょう。
- 知らない人や会ったこともない人にメールアドレスや、名前、電話番号、住所などを教えないようにしましょう。
- 誹謗(ひぼう)中傷等の被害にあった際には、加害者に関わらないようにブロックしたり、会員を辞めましょう。
- 投稿する前に、自分の投稿が人を不愉快にさせるものでないか、モラルの面で問題がないかまでよく考えましょう。
- 万が一、悪質な誹謗(ひぼう)中傷や脅しの被害を受けた場合は、最寄りの警察署に相談しましょう。
- 過去の書き込みの見なおしをしましょう。
無料通話アプリ
一方、無料通話アプリはどうでしょうか。
無料通話アプリには様々なものがありますが、最も利用者が多いのは、LINE(ライン)です。岡山県内では、ネットやコミュニケーションサービスを利用していると回答した児童生徒のうち、小学生の53.3%、中学生の88.9%、高校生の97.5%(2023年岡山県教育庁人権教育・生徒指導課調べ)が利用していて、圧倒的なシェアを誇る人気のアプリです。児童生徒は友達の間での連絡を、メールではなくLINEで行うケースがほとんどです。
無料通話アプリには、他にもカカオトークやDiscord(ディスコード)などがあります。アプリにより、音質の良し悪しがあり、スタンプというイラストマークの種類や内容など、それぞれに特徴があります。これらのアプリはスマホに無料でインストールすることができます。同じアプリが入っていれば、異なる携帯電話会社の端末同士でも、個人間または複数人の所属するグループ内で、音声通話やビデオ通話、メッセージ交換を無料で行うことができます。
これらのサービスの利用設定には注意が必要で、アプリやスマホの設定をきちんと行わなかったことによりトラブルに巻き込まれることがあります。例えば、サービスを利用する相手(友達)を登録する際、スマホの<アドレス帳に登録しているすべての電話番号>に対し「アドレス帳の連絡先を<自動で>友達に追加」「<あなたの電話番号を保有している>ユーザーの『友達』に追加されることを許可する」といった友達を簡単に登録するための機能があります。これら機能をきちんと理解し設定していなかったために、アプリを利用していることを知られたくない相手に知られてしまったり、友人が電話番号を変更したのを知らずに通知し、その番号を新たに利用している第三者に個人情報を通知してしまいトラブルに巻き込まれるケースもあります。
「無料通話アプリ」とは言っても、中高生の利用で多いのは「無料通話」ではなく、文字やスタンプというイラストなどを送り合い、画面を見ながら複数の友達同士でやり取りするグループトークの機能や、「ストーリーズ」という、動画などを24時間限定で発信する機能などです。部活動の連絡など一斉連絡を行うのに便利な反面、お互いの表情や口調が分からず感情が伝わりにくいことから、利用方法によっては様々なトラブルが起きています。
まず、これらのアプリ内で中高生が行うやり取りの多くは、それほど重要な要件というわけではなく、多くは短い一言二言の他愛のないメッセージのやり取りを延々と続けていくといった、「やり取りそのもの」を楽しむ利用です。このため何時間もやり取りを続ける例も珍しくありません。
送ったメッセージを相手が読むと送信したメッセージの横に「既読」という文字や、サービスによっては既読者の数を示す数字が表示される機能もあり、トラブルを引き起こしています。相手がメッセージを読んだかどうか確認できるのは便利ですが、「既読」の状態になったのに「なかなか返信が来なくて不安になる」「読んだらすぐ返信しないと無視していると思われるから、すぐに返信しなければならない」と常に気になって、食事や入浴、勉強中でもケータイ・スマホを片時も手離せなくなるといった依存状態の中高生が増えています。
人間関係のトラブルも起きています。これらの短いメッセージのやり取りでは、相手の表情が見えず、声のニュアンスが分からず、文章量が少ないため誤解を招きやすく、いじめや喧嘩につながるケースもあります。メッセージを読んでも返信しないこと(既読スルー)によって、「はずし」と呼ばれる、グループから排除し仲間はずれにする事例、仲間はずれにしたい人以外で新しいグループを作る事例、ターゲットを招待しては退会させる事例など、いじめの発端となってもおかしくない事例もみられます。
誤解の例としては、「何で行くん?」と交通手段を聞いたのに「何故行くのか?」と誤解されたり、「いいよ(OKだよ)」と肯定したのに「いいよ(だめだよ)」と否定の意味に誤解されたり、「それ良くない?(それ良いよね)」と褒めたつもりが、「?」を打ち忘れて「それ良くない(否定の意)」と送ってしまいトラブルを引き起こしてしまったり、「(運とかいろいろ)持ってるね」とたたえたつもりが、平仮名で「もってるね」と書いたため「(話を)盛ってるね(大げさに言ってるね)」と相手を非難した意味にとられたり…など様々な例があります。気軽に送信できる分、よく確認せずにメッセージを送ってしまうので、送信前によく確認することが必要です。
写真や動画も簡単にやり取りできるのでトラブルが起きています。友達の写真を気軽に載せたことがきっかけで仲が悪くなったり、男女間で裸の写真を送り合ったりするといったことも起きています。
「友人の友人」など直接知らない人と知り合いになり、出会い系サイトと同じような問題が発生したり、「相手から返事がないと心配で一方的にメッセージを送ってしまう」ことがエスカレートし、ストーカーになってしまうといった加害事例も起きています。
限られたグループ内でのやり取りだからと安心して送信した「内緒話」が、グループのメンバー構成全員を把握していなかったために思わぬ人に漏れてしまい、トラブルの火種になることがあります。また、メッセージや写真はコピーで簡単にインターネット上に拡散するため、送信前に、送信しても大丈夫かどうかを慎重に判断することが必要です。
LINEはフィルタリングの設定をしていても使うことができるため、LINE上で起きるトラブルは、使用する本人が十分に気を付ける必要があります。またLINEグループでの書き込みは、ネットパトロールの業者は閲覧できないため、閉鎖的な人間関係の中でのトラブルが起きた時に、発覚しにくいという弊害もあります。
他には、アカウントの乗っ取り、なりすまし、迷惑メッセージが送られてくるというトラブルも発生しています。そのようなメッセージは個人情報を悪用する業者からのものである可能性が高いので、注意が必要です。
無料通話アプリのうち、見ず知らずの人との会話ができるKoeTomoは2020年にSNSをきっかけに犯罪の被害にあった児童が最も多かったアプリですが、同様のアプリが今後も登場する可能性があるので注意が必要です。
問題点・危険性
無料通話アプリは、直接知っている身近な人とのやり取りに使うため、
- サービスや機能・設定をよく理解していないために、自ら個人情報を公開している場合があります。
- 昼夜や場所を問わないやり取りで、生活習慣や学習習慣の乱れが起こります。
- 常に見ていないと不安になるなど、依存状態に陥るおそれがあります。
- 自分が思うペースで返信がないことを一方的に不満に思い、相手の都合を考えたり、思いやりを持てなかったりする自己中心的な思考を助長するおそれがあります。
- 画面を使ったやりとりだけでは、現実における人間同士のコミュニケーションを行う能力が十分に育ちません。
- 既読スルーや誤解等で、グループからはずされるなど、いじめが発生することがあります。
- 大量のメッセージ送信や返信の強要が相手にとってストーカー行為となって いる場合があります。
- 知らない人との出会い、アカウントの乗っ取り、なりすまし、迷惑メッセージが送られてくるなどのトラブルが発生する場合があります。
対策・対処
- 無料通話アプリでやり取りするときには、利用する時間や場所、モラルを守りましょう。
- 「○時以降は使わない」などの約束を、友達同士で決めましょう。
- アプリやケータイ・スマホの設定について理解し、適切な設定をしましょう。
- ID検索機能は、必要時以外はオフにしましょう。
- 安易にIDを掲示板等に載せないようにしましょう。
- 24時間つながっていなくても友達はいなくなりません。アプリをチェックし続けなくても不安に感じる必要はありません。
- 生活の中で現実に人に会って行うコミュニケーションや経験も大切にしましょう。
- メッセージ交換を重荷に思う人もいます。重要な連絡にはアプリではなく、通話や直接などの連絡方法も取り入れましょう。
- 「既読」の状態はメッセージを<読んだか>ではなく<開封>したかどうか確認する機能です。返信を強要するのはやめましょう。
- 自分が送られて嫌な内容、悪口やうわさ話は人に送らないようにし、メッセージを送る前に誤解を招く表現でないか確認してから送りましょう。
- 迷惑な相手をブロックしたり、グループを退会する、アプリを削除することも問題を解決する方法の一つです。
- トラブルに巻き込まれたときは、保護者や学校に相談し対処法のアドバイスをもらいましょう。
- 万が一、悪質な誹謗(ひぼう)中傷や脅しの被害を受けた場合は、最寄りの警察署に相談しましょう。